入り組んだ繁華街に入りこまれて見失ってしまい、追い掛けるのをやめた。
ーヴィンセント、追わないのか?
手元の携帯にメッセージが光った。
強い日の光が服を通して肌を刺戟する。
ー無理だ。この辺は地元じゃないと分からない。
目の前にある雑多な商店の連なりは、ただ繋がっているだけではなくて脇に細い小道がいくつも見つかる。
携帯のメッセンジャーに入って来た問いかけに、ヴィンセントは素早くNoの返事をプッシュした。
店番をしている店員もやる気無さげに店の奥の影に引っ込んで、客の気を引くそぶりも見せない。
午後二時の昼間の一番地面を照りつける太陽の光が、ヴィンセントの帰り路を焼きつける。
ー予告日まで数日しかない・・・。
予告状を乱暴にポケットから取り出して見直してから、ホテルへ戻ろうとヴィンセントは大通りへ出てタクシーを止めた。


「休暇!?」
「そうだ。」
ラザードがソルジャー1st三人を前にして、きっぱりと言った。
「何か企んでるんだろ。」
ジェネシスが言い返すのに、セフィロスとアンジールは同意したい気持ちを押さえて顔を引き締めた。
「別に今取りたくなかったらいい。この後のスケジュールを考えて、適当にとってくれれば言い訳で。」
ラザードがジェネシスのスケジュールを取り出す。
ーあいつ、どうしたいんだと思う?
彼がスケジュールを見始めた時に、アンジールが素早く囁いた。
ー俺たち皆を追っ払いたいんじゃないか?
セフィロスが低い声で耳打ちした瞬間、ラザードの視線を感じて二人とも急いで話をやめた。
「いやなら、言うのは今のうちだ。」
後ろにいる二人の様子をジェネシスがちらっと見る。
「三人一緒の時期に休暇を取っていいなんて二度とないかもしれないな。有り難く休ませてもらう。」
不敵な笑みを浮かべてセフィロスが口を開いた。
自慢の銀髪をさらりと振って、二人の同意も確認せずにセフィロスは勝手に休暇を快諾した。
ー俺いいって言ってないぞ。
ジェネシスが抗議するようにアンジールに言った。
ーいつものことだろう。
がまんしろよ、とジェネシスに言いかけると、ラザードは話は終わったと出ていくよう三人にドアの方を合図する。
ー・・・・・・。
不満そうなジェネシスと早速どう休暇を過ごそうか考えるアンジール、マイペースのセフィロスが順々にミーティングルームを出た。
「だからって、こんな騒がしい所を休暇に選ばなくてもいいだろう。こんな暑い時期は普通はリゾートだよ。コスタ・デル・ソルとか。」
コロセウムを模したような巨大なスタジアムを前にして、ジェネシスが大声で文句を言った。
「どこでもいい、任せるって言ったのはお前らだろ。」
アンジールがパンフレットを持って扇ぎながら、文句たらたらのジェネシスに言い返した。
「別に俺は文句を言っていない。アンジールがどうしても行きたいと言うから付き合っでるだけだ。」
セフィロスが照りつける太陽の中涼しい顔で言った。
南国には珍しい長い銀髪は、強い太陽の光に輝いて人目を惹き付ける。
「大体俺たち毎日訓練してるんだから、人の競技を見たって面白くも何ともない。」
文句を言うジェネシスを無視して、アンジールはスタジアムの近くの日陰を見つけパンフレットを広げてどこに行こうか熱心に調べ始めていた。
「一人しかいない幼馴染みの我が侭くらいお前はきけないのか?」
文句たらたらのジェネシスにセフィロスがちくりと言いさす。
「俺の我が侭も言えるから幼馴染みなんだよ。」
と、ジェネシスがセフィロスに言い返した。
ソルジャーとしての能力はほとんどセフィロスと同等か若干パワーで劣るジェネシスが、アンジールとの気楽な幼馴染みの関係になると遠慮がちなセフィロスに対して俄然強気だ。
ふん、とセフィロスが鼻で笑う。
「おい、バスケ見ないか!」
二人の会話を全く無視してアンジールが三人分のチケットをもう買っていた。
「付き合ってやるよ!」
セフィロスが口を開く前に、ジェネシスが急いで答える。
「良かったよ。チケット買っちゃったんだ。」
「アンジールらしいな。」
セフィロスが少し笑って答える。
「もう始ってるんだ!」
アンジールが急いで二人分のチケットをジェネシスに預けて、さっさとスタジアムに入った。
「ほら、入るぞ。」
ジェネシスはアンジールが消えて行ったスタジアムに入りながら、セフィロスを促した。
ーまったく、こういう時はどうしようもなく勝手な奴だ。
苦笑しながらセフィロスはジェネシスからチケットを受け取る。
セフィロスと一緒に入る気など全く無い感じで、ジェネシスは小走りでスタジアムに消えるとチケットの席にまっすぐ進んで行った。
セフィロスはゆうゆうと受付を通って、観客席の方へ向かった。
途中に天然の光を取り込もうと建築の工夫を凝らした高い天井の広間がある。
上を見ると、色みに工夫を凝らしたステンドグラスを通して日の光が建物にさんさんと入ってきていた。
ー明るいな。屋内(なか)なのに。
建築者の意図通り、天井の明かり取りはスタジアム内を外にいるのと同じような明るさに保っている。
ジェネシスが目の端から消えないぐらいの距離で彼を追いながら、席に向かった。
競技場内に入ると、わっ、と大きな歓声が一気に耳を通り抜けていった。
「セフィロス、遅いぞ。」
すっかり席におさまったアンジールが急かす。
ジェネシスは、今決まったダンクシュートから始る次の試合運びに注目しているようだった。
またあっという間にスリーポイント地点からのシュートが続けて決まって、相手側が警戒して守りを固めているのをセフィロスは面白そうに見ながら席についた。
「セフィロス。お前だったらこのあとどうする?」
試合を夢中で見ているアンジールが聞いてくる。
「あのダンクとロングシュートをうった奴を二人がかりでもいいから押さえた方がいいんじゃないか。」
試合展開から適当にコメントするセフィロス。
アンジールも目まぐるしく攻守が入れ代わる試合運びを楽しんでいる。
と、相手側がやっとシュートを一本決めた時、大歓声の中ジェネシスが携帯がなっているのに気付き、電話の向こうの相手にちょっと言い返して切った。
二人ともその様子に気づかず試合に集中して見ている。
負けていた側は点を追加した勢いに乗って、さらに巻き返そうと激しく相手方へ攻め込んでいた。
と、今度はアンジールが携帯を取った。
「あっ!はい・・・・・・。」
アンジールが意外な人物からだったのか電話をしっかりと握りしめる。
ちょうどその時、何かなっていると思って携帯をセフィロスが取り出した。
ーno registered person
画面の表示がこんなだと、普通は出ないのだが。
しかし、変な予感がして電話に出た。
「セフィロス。初めまして。私はタークスのシスネ。あなた達三人に協力を要請したいの。」
「おまえ誰だ。」
きき慣れない女の声といきなりの依頼に、やっぱり出なけりゃ良かったと普通に後悔した。
「ラザード統括からアンジールに事情はいっていると思うわ。打ち合わせするのにまた連絡する。」
「・・・いきなり人の電話に連絡して来て頼みごとか。お前が何で信用出来ると分かる。」
電話を切るタイミングを逃して、面倒そうにセフィロスが答えた。
「私の連絡先を言っておくわ。ラザード統括の伝言と比べれば一致するはずよ。あなたジェネシスよりいい人ね。彼は用件も聞かずに電話を切ったわ。」
じゃ、詳しい話は後で、とさっさと電話は切れた。
なんだこいつ、と携帯を見てからジェネシスを見ると、彼もセフィロスを見ていた。
「なんだったんだ。」
目が合ってジェネシスがきいた。
「興味ないから切ったんじゃないのか。」
セフィロスが言い返した時、
「ラザード統括から案件が入った。」
と、アンジールが二人に伝えた。
「・・・・・・」
二人とも怪しい電話を受けた後なので無言だ。
遠くの方で試合が盛り上がっているようで、バスケットボールの弾む音がひっきりなしに響いてくる。
「休暇は一時中断、シスネと言うタークスから詳細の連絡が来るはずだ。俺たちの緊急連絡先を彼女に伝えてあると言っていた。」
アンジールは二人に言ってから何もなかったように、目の前に繰り広げられる試合に目を移した。
ー面倒なことになりそうだな。
さっきのシスネからの電話では要領を得ず、きっと一言で済まないようなこんがらかった案件の感じもした。
またワッと競技場が沸いてシュートが決まったようだ。
しかし、競技場に居る三人は既に試合の動向に集中はできなくなっていた。


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